離婚したフィリピン人の再婚手続きについて
フィリピンは、原則離婚を認めていない
フィリピンでは、「婚姻は恒久的な結合」と規定し原則離婚することができません。
フィリピン人同士が婚姻を解消するためには、「婚姻の無効」または「婚姻の取消し」の判決を得る必要があります。
「婚姻の無効」が認められるとき(最初から婚姻の効力なし)
- 18歳未満の者の婚姻
- 婚姻具備証明書が無い状態で挙行された婚姻
- 婚姻相手を取り違えた婚姻 など
「婚姻の取消し」が認められるとき(取り消さるまで婚姻は有効)
- 18歳以上であるが21歳未満であり、親、後見人等の同意なく挙式された場合
- 婚姻の同意を強制、脅迫、不当な圧力によって得た場合
- 妻が夫以外の男性により妊娠していることを隠している場合
- 性的伝染病を隠していた場合
- 麻薬中毒、アルコール依存症 など
フィリピン人の離婚が認められるケース=フィリピン人と外国人との離婚
フィリピン家族法において、唯一離婚が認められるケースは、フィリピン人と外国人の離婚が外国で成立した場合です。
フィリピン家族法には、次のように規定されています。
「フィリピン人と外国人間の婚姻が有効に挙行された場合において、その後、外国において、外国人配偶者にとって有効な離婚が成立し、外国人配偶者が再婚する資格を取得したときは、当該フィリピン人配偶者は、フィリピン法の下でも再婚する地位を取得することができる」
ここでいう「外国における有効な離婚」には、日本における、協議上の離婚、調停による離婚、裁判による離婚が含まれます。
なお、フィリピン人が離婚訴訟を起こし離婚判決を得た場合には、離婚を禁止するフィリピン法の適用を受けてしまい、その者は再婚できないと解されていますので、注意が必要です。
フィリピン人の離婚の効力は、フィリピンの裁判所において「国外離婚の承認判決」を得ることが必要
2010年8月、フィリピンの最高裁判所は、「外国における有効な離婚が直ちにフィリピン国内で効力を有するのではなく、フィリピンの裁判所において国外離婚の承認判決を得ることによって効力を有する」という趣旨の判断を示しています。
それを受けて、2012年11月頃より、在日フィリピン大使館が、日本で離婚したフィリピン人に「離婚証明」を発行しなくなっています。
そのため、日本で離婚したフィリピン人が離婚を認めてもらうためには、労力をかけてフィリピンに出向き、裁判所で離婚の承認判決を得る必要があります。判決には1年程度かかっているようです。
なお、在マニラ地方裁判所において離婚承認判決を得るには、次のような書類が必要となっています。
- 婚姻契約書
- 離婚届受理証明書
- 戸籍謄本
- 日本民法(抄)
これ以外に、証拠書類の提出を要求されることもあるそうです。また、書類はすべて日本側で公印確認及び翻訳証明を得た上で、在日本フィリピン大使館領事部で認証を受けたものが必要です。
ところで、フィリピンの離婚判決を引き受ける弁護士には、法外な弁護士費用を要求する人もいるようですので注意が必要だと思います。
在日フィリピン大使館のホームページには、「外国離婚の承認裁判」に関することが記載されています。また、そのページから「フィリピン統合弁護士会」のホームページへのリンクが貼られています。ご参考にされてみてはいかがでしょうか。
■参考リンク